「玄関の扉の向こうにはきっと、広い世界があるはずなのに…一歩も外に出られない日々でした。」
そう語るのは、ウェルカムベビープロジェクト担当スタッフの猪谷友子。2018年に双子を出産し、孤独の渦中にいた彼女を外の世界へ繋いだのは、一箱の「出産祝い」でした。プロジェクトが10周年の節目を迎える今年、受け取った側から贈る側になったスタッフの猪谷に、一箱のギフトから始まる温かい循環について話を聞きました。
~出産祝いを受け取ってから贈り手へ、
ウェルカムベビープロジェクト担当 猪谷友子~
「来たことに意味がある」産後半年、双子とようやく辿り着いた子育て広場
猪谷:私のこまちへの関わりの入り口は、ウェルカムベビープロジェクトでした。 2018年に出産したのが双子の男の子だったんです。上の子がもうすぐ3歳、自宅保育をしている段階で双子を出産して、同じタイミングで引っ越してきたんですね。
――お子さんを連れての引っ越しと、産後直後の双子育児、想像するだけで大変そうです。
猪谷:本当に、当時は外出するということが全然できなくて。「できない」のレベルが、外にゴミを捨てに行くことすらできない、1歩も外に出られないという状況だったんです。家の中にこもって、言葉も通じない赤ちゃんと24時間の育児の中で、外の大人とも話せない。さらに双子育児で疲弊してしまい、世界から取り残されたような気持ちになっているところでした。
そんな中、近くに子育て拠点の「とっとの芽サテライト」があったのですが、実際に行けるようになったのは、産後半年近く経ってからでした。お子さんがお一人なら3~4ヶ月で行かれると思うんですけど、私の場合は出かけるタイミングを掴むのにも何でも2倍の時間がかかってしまって。上の子を公園にすら連れて行ってあげられない申し訳なさもあり、意を決して、ようやくその広場に行ったんです。
―― 産後半年、必死の思いで一歩を踏み出した場所だったんですね。
猪谷:はい。「とりあえず来たことに意味がある」という思いで行った先で、部屋の奥の方に疲れてポツンといた私たちに、スタッフさんが「こんなのがあるんだよ、申し込んだ?」って1枚のチラシを持って声をかけてくれたんです。それが、ウェルカムベビープロジェクトの「出産祝い」のチラシでした。家に帰ってから申し込んで。あの時、教えてもらえたことが、私にとってはすごく大きな第一歩でした。
「おめでとう」と言ってくれる人が、家族以外にもいるんだ
―― 数あるチラシの中の、温かい一言が最初の手がかりだったのですね。
猪谷:そうなんです。当時、外に出られないということは、「赤ちゃん可愛いわね」「おめでとう」と街で声をかけてもらう機会も、誰かと会う機会も一切ないということでした。社会の中で、自分は全く違う世界に生きているような感覚だったんです。
そんな時に、ウェルカムベビープロジェクトの「出産祝い」の箱が家に届いて、バカっと開けた時に、「赤ちゃんのご誕生おめでとうございます」という言葉があったんです。

「ああ、この子たちに「おめでとう」と言ってくれる人が家族以外にもいるんだ」って、それが本当に嬉しくて。毎度毎度、この話は何年経っても当時の熱い思いが蘇ってきちゃうんですけど、本当に嬉しかったんです。
だけど、こんなに嬉しいっていう気持ちを、当時は伝える相手もいなくて。外に出られないから、この感謝を伝えることもできないまま、日常に戻って何年も経っていきました。
―― その「受け取った側」の猪谷さんが、なぜ今度は「贈る側」の事務局にいらっしゃるのですか?
猪谷:何年か経って、子どもが大きくなってきた頃、たまたま、こまちカフェで働く友人から「ウェルカムベビープロジェクトの事務局スタッフを募集しているよ」と教えてもらったんです。その時、来年度のプレゼント品をお披露目するイベントが開催されることを知って「あ、これ私も出産祝いでもらったな」という当時の熱い思いがブワッと蘇ってきて、とりあえず行ってみよう!と応募したのがきっかけでした。
スタッフになって本当に嬉しかった出来事があって。去年、実際にギフトを届けてくださっているヤマト運輸のドライバーさんのところへ、直接ご挨拶に行ける機会をいただいたんです。それまでなかなか直接お会いする機会がなかったんですけど、同行させていただいて、7年越しに、ドライバーさんに直接「本当にありがとうございました」って自分の感謝を伝えられた。自分の気持ちを伝えられる機会をいただけたことが、非常に大きな出来事でした。
箱がもたらす、時間を超えた温かい循環
― 素晴らしいですね。受け取ったメンバーが今度はこうして贈り手側に回っているんですね。
猪谷:今週もウェルカムベビーの出産祝いに入れる、手づくり巾着をつくるイベントがあるんですけど、そこにボランティアとして参加してくれる方の中には、出産祝いを受け取ったお母さんもいらっしゃいます。
でも、だからといって、「みんながみんな次の贈り手になってほしい」とか「こまちぷらすに何かしてほしい」と思っているわけではないんですよ。 私自身、ここにいるのは“たまたま”だと思っています。そんなふうに、イベントだからちょっとお手伝いしてみようかな、というゆるい入り口がたくさんあって、受け取った方が、半年後でも、1年後でも、私みたいに何年後、何十年後でもいい。 この「出産祝い」が、それぞれの「自分らしい子育て」の何かひとつのエッセンスとして、いつかどこかでフワッと花開くタイミングがあればいいなあ、という感覚でやっています。
【編集後記】
「この箱の先に誰かが『おめでとう』と言ってくれている」そう感じられるような人の手の温もりがあるからこそ、ウェルカムベビーの「出産祝い」の箱は、今も誰かの救いになり続けているのだと感じました。この温かい巡りをさらに次の世代へと繋いでいくため、皆様からのクラウドファンディングへの応援を心よりお待ちしております。
(インタビュアー:鳥居真樹 / こまちカフェへの訪問をキッカケに、ボランティアとして関わる2歳児の母。)
詳細はプロジェクトページをぜひご覧ください。
「恩送りのバトン」をこれからも ~こまちぷらす クラウドファンディング 2026~
https://congrant.com/project/comachiplus/22569

