【対談録】クラウドファンディング特別対談   ~育Qドットコム株式会社 社長 広中秀俊氏×こまちぷらす森~

こまちぷらすでは、8/25(金)~9/23(土)まで、クラウドファンディングを行っておりました。

クラウドファンディング対談企画の第6弾ゲストとして、育Qドットコム株式会社 社長 広中秀俊氏にお越しいただきました。


森:こんにちは!今日はゲストに育Qドットコム株式会社の広中 秀俊さんにお越しいただき、こよりどうカフェから対談をお届けしています。広中さん、よろしくお願いします! 

広中 秀俊さん(以下、広中):よろしくお願いします!

森:もともと広中さんは住宅の仕事をされていたんですよね?

広中:そうですね。建築関係にいたので、こよりどうカフェの建物を見るのも楽しいです。

森:ぜひ楽しんでいってください。一番印象に残っているポイントはどこですか?

広中:丸くアールでつくるのは、建築的にも難易度が高いし、デザイン性に統一感を持たせることも難しいと思うので、すごく工夫されているなと思います。

森:なるほど!

広中:天井が高く、天窓もつけられていて工夫されていますね!

森:見るところが違いますね(笑)ありがとうございます!それでは、広中さんから自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

■広中さんの活動紹介

広中:はい!いま、男性の育休を推進していまして、企業や自治体で研修やセミナーをやっています。男性が育休を取ることが当たり前になる社会をつくるための取り組みをしています。

森:いつから、こちらの活動を始められたんですか?

広中:2人目の子供が生まれたのが6年前なのですが、その時から、自分が育休を取ることに際して、いろいろ育休制度を調べて、こんなにすごく良い制度なのに、全然使われていないのがもったいないと感じたことがきっかけです。

森:そうなのですね。育Qドットコムについても教えていただけますか?

広中:6年前は住宅メーカーのミサワホームで働いていたのですが、子どもが生まれてから、「育休制度を広めたい!」と思い翌年に会社を辞めました。その後に個人事業主で2年くらい働いていたら、自治体や企業からお話をいただく機会が増えてきたので、法人化してしまいました。それが現在3年目になります。ふだんは自治体と一緒にセミナーを企画したり、企業の人事部と研修を一緒に設計したりしています。

森:なるほど。いま、さらりとおっしゃいましたけど、会社を辞めて独立するということは、相当の覚悟があったのではないかと思うのですが、その気持ちを動かすものはなんですか?

広中:昔から子ども向けの事業をやりたいという想いがありました。育休によって日本全国で少子化対策をしようという動きにもなっています。そして、働き方改革の文脈で言うと、業務を整理できないと育休は取得できないと思っています。少子化と働き方改革の両方からやりたいことがあったので、ちょうどタイミングがハマったのだと思います。

森:本当にやりたかったこと、ずっと気になっていたこと、そしてただ育休を広めるだけではなく、そのための業務効率化も広中さんの得意分野であったということでしょうか?

広中:そうですね。もともとバックオフィスというか、経理部門に所属していて、業務効率化をずっと取り組んでいたこともあり、働き方改革の仕事もやってみたいと思っていました。育休制度は働き方改革においてのメインどころでもあるので、ちょうど良かったんです。

森:ありがとうございます。そうすると、広中さんとご一緒した自治体の方や企業のみなさんは、ただ「育休を取ろう!」というスローガンを掲げるだけではなく、実際にどうやったら育休が取れるのかという、業務の見直しとセットでやっているということなのでしょうね。

広中:そうですね

森:そうすると、実際に育休を取る方は増えていくものなのですか?

広中:まず、法改正がここ1~2年くらいで3段階にわたって行われたのですが、そもそもそれを知らない方が多いです。自治体とよく行っているのは、法改正の内容をインプットしてもらうことですね。市民や経営者に知って欲しいという思いでやっているケースが多いです。

森:実際に法律の後押しがあると、物事が進みやすくなることがあるものの、どちらかというとマインドが追い付かない人もいるのではないか、と思うのですが、実際にどんな生の声を聴いたりしますか?

■育休の法改正に気持ちが追いつかない人の声

広中:やっぱり、都市部と地方部では温度差があります。都市部は、人事部やダイバーシティ推進部が旗を振ってくれて、「育休を取りましょう!」と言うので、割と文化ができやすいです。地方部で、特に中小企業ですと、過去に周りで育休を取った人はいないので、文化が全くないことがあり、地域差があると感じます。

森:経営者だけではなく、育休を取る本人というように、主語が2つあると思うのですが、特にどのような戸惑いの声を聞きますか?

広中:中小企業であると、仕事が属人的と言いますか、その人がいないと会社が回らなくなる、ということがあります。そうゆう状態だと、本人もなかなか取得したいことを言い出しづらい。なので、そこの業務整理や代替要員の補填で戸惑っている方が多いように思います。

森:そうすると、育休を取得することは、本人の気持ちだけではなくて、「いかに仕事を属人化しないようにするか?」というところから、手を付けて考えていくということなのですね。そうすると法律も変わってきて、あと数年すると、都市部はもしかしたら少し早めに、地方でも少しずつ育休の取得率が上がってくると思います。今回特に広中さんと深めていきたいと思っていることが、育休を取得した後に、「いかに取った本人を孤立させないか?」ということです。その点について、広中さんがお感じになっていることはありますか?

■育休を取得した後、本人を孤立させないために

広中:そうですね。私も子どもが2人いて、自分が休みの時は、基本的に自分が子どもたちを外に連れて行っていたんですが、よく公園や図書館、そして児童館をフル活用していました。そもそも、そうゆう施設があることを知らないパパも多いと思うので、まずは施設の存在を認識することですね。最初行くのはハードルが高いのですが、勇気を出して1回行ってみると、意外に設備が整っていて良かったと思えると思います。ぜひ、自治体の施設はフル活用した方が良いと思います。

森:なるほど。その場所を探すために何かコツはありますか?

広中:まずはシンプルにグーグルマップを使うこと。家の周辺で「公園」をキーワードに探すと、思った以上に出てくると思います。私は世田谷に住んでいたのですが、児童館も一駅に1カ所くらいあるので、児童館も制覇するくらいの勢いで調べました。あと自治体の施設も、ものすごく充実しています。自治体も力を入れているので、そうゆう施設も検索してみると良いと思います。

森:なるほど。広中さんの話を聞いていて思ったのですが、今日の対談を迎えるにあたって、まだ育休を取得したことがないパパの意見を聴いてみました。その中で例えば、「育休を職場で取った人がいないとなると、取ること自体が非常に勇気のいることです」という声がありました。最初は理解が無くても育休を取ることは、なかなかハードルが高いと思うのですが、その場合はどのようにアドバイスをされているのですか?

■育休を取ることハードルを感じる方へのアドバイス

広中:いま、育休取得率が高い会社は、企業価値がすごい高いと評価されるんですね。「人的資本経営」という言葉がニュースでもよく取り上げられていますが、有価証券報告書という決算書に、上場企業は「男性育休取得率は〇%だ」と載せないといけないことが2023年6月から義務になりました。それを見て、投資家も企業の価値を判断していくので、男性が育休を取れる会社は評価される時代になってきています。「自分が育休を取ることで会社の価値も上がるんだよ」ということを、会社の上司に伝えて理解してもらえれば、割と取りやすくなるのだと思います。

森:仕事が回らなくなって大変なのではなく、会社の価値を上げていることを、まず伝えるということですね。実際に育休を取った方も私の周りにいるのですが、その方のパートナーの話を聞くと、「実は家で寝ているだけだ」とか、「ごろごろしているだけ」とか、年休のように育休を取っている人もいなくはないとのことです。どうすれば、パートナーシップと言いますか、自分が主となって、育児の時間を楽しみたいというマインドに切り替わっていくのか。それとも、みんながそうする必要はないのか。広中さんは、どのようにお考えですか?

■育休を取得した本人のマインドセット

広中:各家庭で価値観が違うと思いますが、私がよく心がけていたことは、パートナーを一人にさせてあげること。四六時中育児をされているので、一人の時間を持ってもらいたいと考えていました。そうすると、自分が子どもを連れて外に行かなきゃいけない。それで毎週違う場所に行っていました。「今日はこの児童館、次はこの公園」と毎週計画を立てていました。パートナーが一人の時間を持つことは大切だと思うので、それを心がけていました。

森:「一人の時間が必要だ」と思うようになったのはなぜですか?

広中:やっぱり、夜も育児で遅くなってしまうこともありますし、時には一人でぼーっとする時間も必要だと思います。なので、家族みんなで出かけることも大切だとは思いますが、なるべく一人にさせることを心がけていました。

森:このあたりは仕事も一緒だと思うのですが、一人でやる仕事もありますが、だいたいはチームで動く仕事が多いと思います。主担当がいたり、サブの担当がいたり、補佐的に事前に下調べや準備をしてくれる人もいる。そのように「チームでやること」と考えると、「育休を取得している期間にどのような気持ちで取っているのか?」が重要だと思っています。「自分が主担当である」という気持ちで、子どもの状況や下調べをしていくのか。それともお任せされたところ、準備されたところでやっていくのか。それによってマインドセットがだいぶ違うと思います。

広中:そうですよね。私が良くお話をさせていただくのが、パパって賞味期限があると思っています。特に初めて子どもができたときって、永遠に父親が続くと思っている人が多いのですが、だいたい10歳くらいになると、パパと遊ぶより友達と遊ぶ方が楽しくなってくる時期が来ると思うんですよね。「パパの賞味期限って10歳なんだな」って考えると、最初の1年はすごく価値観が現れます。「10年しかないのであれば、最初の1年はちゃんと一緒にいてあげないといけないな!」って思うマインドセットになってくる。そうすると、育休を取った方が良いという流れになってくると思います。

森:なるほど!「意外に時間が短いから、そこをいかに楽しめるか」という気持ちに切り替えるわけですね。もう一つ聞いた話では、承認欲求を持っている人が男女問わずで多くて、「子どもと育休を取って楽しもう!」と思ったんだけれども、意外に単調な毎日だったり、誰からも評価されないことから、面白さを感じずなかなか楽しめない人もいると聞いたことがあります。そのような方たちには、どのようなメッセージを出されているんですか?

■「単調で評価されない」と育休を楽しめない人へのメッセージ

広中:そうですね。一つあるとすると、AIと育児って今後いろいろな展開があると思っています。例えばAIで読み聞かせができるんです。絵本のムービーをつくることもできます。絵本を自分でカスタマイズしたりとかって、男性は結構好きなんですね。そうゆう楽しみを取っ掛かりに育児へ参加することができれば、育児をしながら自然にリスキリングじゃないですが、AIのスキルが付いてくるみたいなこともあります。それによって承認欲求が満たされるケースもあると思います。男性が育児に参加する取っ掛かりとしては有効なのではないでしょうか。

森:そうゆう、自分の関心に近い何かと掛け合わせていくと、面白くなっていくということですね。

広中:そうですね。

森:あとは、お父さんのうつみたいなところも、テーマになると思ったときに、「なんとかなるかな」と思って育休に入っていくと思うのですが、想定しないことがいろいろ起きるじゃないですか。想定していないことが起きたときは、自分の手元に「何をしたら良いか」という経験もない。仕事だったら、だいたい引継ぎを受けたりしますが、それもない。あとは心身ともに疲れ切っていたりすると、「何とかなると思っていたけどならない」。ネットワークもないので、頼る人もいない。そうゆうとき、どうやって抜け出していけば良いのでしょうか。私たちはカフェをやっていると女性と会うことの方が多いですが、男女関係ないですよね。女性はカフェでご飯を食べたりイベントに参加する経験の中で、抜け出すこともありますが、男性の場合はどうですか?

広中:そうですね。メディアに出てくるイクメン特集を見ていると、キラキラしていて真似できない感じだと思うので、職場のパパで年代の近い人とパパ友だちをつくることは、すごく有効的ですね。あとは、先程も言ったように自治体をフル活用することですね。いま、伴走型相談支援が自治体で始まっていますが、そこで2回行われる面談で相談をすることもできます。「困ったときはこの人だよ!」というネットワークができるので、そこも活用することですね。

森:ちなみに、広中さんは困ったことはありましたか?

広中:困ったことはありましたが、割と会社にパパ友がいたので相談できたことは助かりました。

森:定期的に会っていたのですか?

広中:そうですね。もともと会社にはパパコミュニティがなかったので、自分でつくったのですが、定期的に飲み会をやっていたら仲良くなりました。会社のパパ友って、すごく心強いんですよね。休みの日もだいたい同じですし、「だいたいこの時期は忙しい」と会社の忙しさも理解してくれるんです。

森:ありがとうございます!今日、いくつかのトピックについて質問したり、話すことができたのですが、改めて私がポイントだと思ったことは、「自分の関心に近づけて面白がること」ですね。自分が所属しているコミュニティ、例えば仕事であれば職場ですよね。その中で近しい経験をしている人と、なるべく早くつながること。そこを入口に、自分の分からないことや困っていることを解消する。こうゆうことがポイントだと思いました。あと、マインドセットの部分では「賞味期限」のお話がありましたが、お父さんでいられる時期は短いわけだから、期間限定であることをどれだけ自分が意識をするかが大事ですよね。そこは一つ頭の切り替えをするスイッチなのでしょうね。

広中:どこかのことわざで、「子どもって3歳になるまでに親孝行を全部する」というものがあります。圧倒的に3歳までってかわいいので、親孝行をしているという意味ですね。その時期に一緒に居られないのは、すごくもったいないので、それも期間限定だなと思います。

森;なるほど!確かにそうですね。いま、私の子どもが16歳と15歳なのですが、圧倒的に親よりも周りの友だちと過ごす時間の方が長いですし、一番濃い時期を過ごしたのは3歳くらいまでの時期だと思います。とはいえ、その渦中にいたときは余裕をもって俯瞰することはできなくて、なかなか四苦八苦していました。でも、通り過ぎた人の話を聞くことで、時間の貴重さに気付くことも一つポイントなのかもしれないですね。ありがとうございます!最後に、私たちこまちぷらすは、「地域の中で子どもを育てることを当たり前に!」と思っています。ただ今日の話にあったみたいに、それってすごくハードルが高かったり、取っ掛かりや知り合うきっかけがない。公民館や市民センターなど、サービスの利用はあるんです。でも頼り合える関係まではなかなか無いと思うんです。一方、広中さんは少年野球のコーチもされているんですね。

広中:そうですね。地元の少年野球のコーチをしています。私の子どもは小学校5年生で高学年のチームに入れるのですが、未就学児も参加できる低学年チームもあって、3歳くらいの子どもも入れるんです。そうゆう地域のスポーツチームが子育てをサポートしていけたら良いのではないかと思っています。

森:そうですね。コーチという役割を果たすことで、仲間ができたりもしますよね。

広中:そうですね。

森:そうゆうスポーツが好きだったり、本が好きだったり、いろいろなテクノロジーが好きだったりと、それぞれだと思います。だから「フック」みたいなものを地域でたくさんつくっていけると、みなさんもつながりやすいのではないかと思いました。こまちぷらすとしても、女性スタッフが多いですが、お父さんたちも育休中に子どもと過ごす時間を楽しんで、情報と人がつながれるように頑張っていきたいと思います。最後に一言メッセージをいただきたいのですが、私たちは「まちのみんなで子育てをすることが当たり前になると良いな」と思って活動をしていますが、そこに向けての期待ですとか、応援メッセージをいただけますでしょうか?

広中:私もよく児童館や自治体の子育て施設を使っていたのですが、なかなか平日にはパパがいない。たまにいたとしても、急にLINEを交換したりってできない感じですよね。こよりどうカフェのように、「パパが行きやすくて、子どもも自由に遊べるような場所が家の近くにあったら良いな」と思いました。

森:今日は本当にありがとうございました!