【産前産後の行動変容についての調査】
昨年、横浜市大の三輪先生及び学生の石井さんがこまちぷらすでやっている事業の一つをフィールドにおいて、産前産後の母親の行動変容について調査と分析をしてくれました。その報告を受けたので、こちらのホームページにも概要を記載いたします。
調査は、こまちぷらすが毎週金曜日神奈川県戸塚区にあるイオン東戸塚(大型複合商業施設)の中で「こまちパーク」という事業をしているのですが(0歳ー1歳のお子さんとマタニティの方を対象に、お話しをしたりする無料の場をアウトリーチ型で実施)そこで、産前と産後の行動範囲の変化を、詳細なマップを使いながら調査をしていくというのものでした。
87人の方がその調査に参加をしてくれて、(84人が有効回答)大きなマップに自分の家や胎児期によくいった場所、今(0歳児期)よく行く場所をプロットしてくれて、かつ、いろんなヒアリング項目にこたえてくれました。ポイントは、「商業施設内の遊び場で調査を実施した」ということです。ふらっと歩いている人にマップをひろげて、詳細調査をするというのはなかなか簡単ではないのですが、日ごろから商業施設内に大きなひろばがあり【場】、そこでゆったりと過ごすスペースとつなぐ人を毎週金曜日こまちぷらすから2人いっていること【人】、また、そこにマップをひろげてお話をするというイベント性【ツール】があったということ、そういったことの組み合わせもあって実現できた貴重な調査だったと思います。
【胎児期と産後よく行く場所⇒商業施設中心】
調査の分析結果は、今の商業施設を中心に外出をしている家庭が多い中で、とても現状を表していると思いました。ご本人と先生に許可を得たので、少しだけここで共有したいと思います。
まず、胎児期でよくいく場所・0歳児のときによく行く場所は、ともに大型複合施設ということでした。これはイオンモールのような場所のみならず、出産後はららぽーとなど、区外の駐車場やおむつ替え等が便利なところも含めてです。
『無目的にとにかく安産のために歩く』という産前の行動から、『子どものために、はっきりした目的のために行動する』という変化が印象的だったということをヒアリング結果からお話ししてくださいました。
【行動範囲の変容について】
また、もう一つ分析として見せてもらったのが、産前と産後の行動範囲の変容についてです。
もともと胎児期(妊娠期)に複数行く場所をもっている人は、そのまま複数行く場所を持ち続ける、もともと行く場所の種類も箇所も少ない人はそのまま産後も行く場所は画一的だということです。【固定化する】ということは、はっきりしています。この調査を、同じ項目で拠点で調査をした他のゼミ生もいるそうなのですが、その調査結果は違うものだったとのこと。産前も産後も準外向的・準内向的な行動パターンの人がボリュームゾーンだったそうです。産前から拠点につながっているからなのかどうかまでは分析はできなかったということですが、産前に行く場所の種類・箇所数を多く持っていることは、産後の行く場所の箇所数種類数を持つことにつながる、ということはあるかもしれません。区のプレママプレパパ教室や産前の両親教室等で、お散歩コースを提案したり実際につくってみることで、産前から様々な場につながっていくことはとても意味があることでしょう。今後提案していきたいことの一つです。
【行動パターンと子育て不安の関係】
また、行動変容パターンと「子育て不安」や「地域との関わり」の関連もとてもはっきりした結果がでていました。いく場所の箇所数と種類数が多いと、子育て不安は少ない傾向にあるそうです。
最後に、調査に参加してくれた方々の現状を見ると、9割核家族、6割第一子、5割が就労中もしくは育休中でした。
更なる詳細調査のデータを見ると、51%の人が産前直前まで働き、47.6%が育休中で、育休とる人のうち、77.5%の人が1年以内に復帰予定だということ。40%の方が転居予定(多分転居する、転居する)だということも分かりました。産前直前まで働き、産前は大型商業施設で買い物や散歩をし、産後も大型商業施設(イオンモールやららぽーと等)を主として過ごしていること、また、満足度は決して低くないということもこれらのデータを見ていて感じました。また、5割の人が里帰りをしていましたが、その里帰り先は同じ横浜内が多かったということも、ベッドタウン2世代目らしいまちだと思いました。
カフェの運営のみならず、アウトリーチとして0歳児1歳児向けに事業を無償で展開するということは、決して簡単なことではないことは事実ですが、今の子育て中の家庭の行動パターンや範囲(商業施設が胎児期最も行く場所であり、産後も行き続けている場所であること)を考えると、すごく大事な地域への接続の「場」だと思います。事業展開を他で強化することもあり、また、人を2人行き続けてもらうことがなかなか人員的にも厳しくもあり、4月からは毎週実施することができず月3回の実施になります。この調査の結果をみながら、それでも続ける意味・どうやったら続けていくことができるかを再度考えていかねばと思ったのでした。私たちだけでは難しい。でも、どうやったらパートナーシップや支えてもらいながらできるか、、、まだ答えは見つかっていませんが、この調査が多くの人と商業施設内で地域への接続をつくっていく場をつくる意義を共有するための共通言語になることは間違いないと思いました。
三輪先生、石井さん、調査にご協力くださったみなさま、ありがとうございました。