こまちカフェのキャストとして働いたのち、現在は、岡山県岡山市に移住して親子向けの居場所を運営している楳溪奈美さん。 誰も知り合いがいない土地での「孤立」を経験したからこそ、今も遠く離れた場所から寄付という形でこまちぷらすを応援し続けています。 先輩ママから受け取った優しさのバトンや、離れていても寄付で「仲間」であり続ける理由について、お話を伺いました。
【プロフィール】
楳溪(うめたに)奈美さん 元「こまちカフェ」のキャストとして働いたのち、現在は岡山県岡山市に移住し、親子が立ち寄れる居場所シェアリビング『ことこと』を運営している。
スマホが鳴らない10ヶ月。誰も知らない土地で知った「孤立」
― 奈美さんは以前、こまちカフェのスタッフをされていたんですよね。
楳溪: はい。今の店舗に移転した約10年前、こまちカフェでホールのキャストとして働いていました。見守りさんやスタッフに見守られながら、子どもと一緒でもお母さんが自由にご飯を食べられる場があるなんて、革命だなと感じていました。
その後、8年前に再婚を機に岡山へ移住したんです。子どもたちはもう自立していたので、ママ友も作れず移住してからの10ヶ月間、本当に誰とも喋れない日々が続きました。それまでだったら、こまちカフェの通りを歩いたら、行き帰りですれ違う誰かと挨拶するのが当たり前だったんです。でも、そういう繋がりが一切なくなって、スマホが全く鳴らない。
「これ、何のために持ってるんだろう?」って。孤立って、こんなに簡単に自分の身に降りてくるんだ、と痛感した経験でした。
― その経験が、今の岡山での居場所づくりに繋がっているのでしょうか。
楳溪: そうですね。自分が孤立を経験したからこそ、誰もがふらっと立ち寄れる場所が必要だと思って。移住者対象の会から始まって、今はシェアリビング『ことこと』という、子育て世代を中心に0~100歳までが気軽に集える居場所を運営しています。

シェアリビング『ことこと』の1枚(写真提供:楳溪さん)
子育てしながら救われた「私に返さなくていいんだよ」という言葉
― 居場所づくりを続ける中で、大切にされている「言葉」があるとお聞きしました。
楳溪: 私がまだ子育ての渦中で余裕がなかった頃、幼稚園児だった二人の子が泣き叫んで途方に暮れていたんです。その時、一人の先輩ママがサッと来て、子どもを抱き上げてくれました。お礼を伝えた私に、その方はこう言ったんです。
「私に返さなくていいんだよ。次の世代に返してあげてね」
― 素敵な言葉ですね。
楳溪: ずっとその言葉が心に残っていて。元々、子どもが大好きだったので、 子育てに悩むなんても思ってもなかったんです。でも、よく考えてみたら「子育て」自体に悩んでるっていうよりも、「自分の思い通りにならなさ」や「人手のなさ」が苦しかったんです。だから、そこで誰かにちょっと話を聞いてもらうとか、抱っこして助けてくれる存在がいるということが、自分にとって助けになりました。
だからこそ「次の世代に」という言葉が心に残っていて、「手が離れた時に自分に何ができるだろう?」と考えていました。あの時もらったバトンを、次は私が誰かに渡したい。その想いがこまちでの活動、そして今の岡山での活動に繋がっています。
「〇〇ちゃん、大きくなったね」という何気ない声かけから
― 奈美さんから見て、こまちぷらすの魅力はどこにありますか?
楳溪: 家族以外の誰かが、自分たちのことを知っていてくれる安心感だと思います。こまちカフェのキャストでみなさんをお迎えしていたころ、私は人の名前と顔を覚えるのが得意だったんです。だから、ドアを入ってきた時に「あ、〇〇ちゃん!大きくなったね」って声をかけたり。「このあいだ、あんなこと言ってたけど、その後どう?」みたいな話をしたり。何か特別なことができるわけではないけど、「気にかけてくれる人がいる」という何気ない繋がりがあることが大事だなと思っています。それは今も、岡山での居場所でも変わらずやっていることです。
「寄付」という形で「自分もその活動の一員になれる気がする」
― 今、こまちぷらすはクラウドファンディングに挑戦しています。遠くからどのようにご覧になっていますか?
楳溪: 2030年のビジョンのイラストをSNSで見た時に、すごく涙が出そうになって。「自分もこの景色のどこか一端を担いたい」と思ったんです。

― 奈美さんは、離れた場所からも寄付という形で関わり続けてくださっていますよね。
楳溪: 実は以前、クレジットカードの更新忘れで引き落とせていなかった時期があったんです。明細を見て気づいた時、なんだか「仲間から一回外れちゃったみたい」ですごく残念な気持ちがして…。
―手続き上のこと以上に、心の距離が空いてしまったような寂しさがあったんですね。
楳溪: はい。私にとってお金を出すことは、こまちが実践してくれているところに「自分も乗っかる、応援する」ということなんです。手は動かしていなくても、思いは一緒。寄付をすることで、「自分もその一員になれる、仲間になれる」と感じています。
私自身、思いはあっても、続けられる仕組みがなければ苦しくなって、団体は潰れてしまうという経験をしました。だからこそ、こまちみたいに、ちゃんと自走している団体があるんだ、って私は岡山でも色んな人に伝えまくっているんですよ(笑)それがもっと広がっていくといいなと思っています。
【編集後記】
奈美さんが先輩ママから受け取った「恩送り」のバトン。それは今、場所を超えて、確実に次の世代へと手渡されているんだなと感じました。
私自身、実家も頼れない距離の都会で子育てをしている当事者です。親や保育園の先生以外にも、娘のことを大切に思ってくれる人がこのまちにいる、ということ自体がどれだけの安心感になるか、日々身に染みています。こまちぷらすが紡ぐこの温かな連鎖を、さらに広げていくために。皆さまのクラウドファンディングへの応援をよろしくお願いいたします。
(インタビュアー:鳥居真樹 / こまちカフェへの訪問をキッカケに、ボランティアとして関わる2歳児の母。)

